『新しいリベラル』橋本努/金澤悠介 (短評)

 現代日本で「リベラル」と聞くとどのような人々を想像するだろうか。自民党を批判して共産党立憲民主党を支持する人々だろうか、「戦後民主主義」の価値観を内包して護憲を主張する人々だろうか、子育て施策の充実を望む人々だろうか、女性への支援を希望する人々だろうか。

 先日行われた参議院議員選挙では与党の自民党議席を減らすことになったが、その後、これまで自民党を批判してきた人々は、自民党総裁でもある石破茂首相を支持するような発言を始めた。石破辞めるなデモというものも行われた。リベラルにとって、自民党は諸悪の根源ではなかっただろうか。

 いったいリベラルとは何なのか。本書はこれまで「リベラル」の名のもとに一括りにされてきた概念を歴史的な視点と統計的な手法を用いて分析し、いわゆる「戦後民主主義」と親和的な「従来型リベラル」には該当しないが、さりとて「保守」ではない、まさに「新しいリベラル」と称すべき人々を見出していく。

 「新しいリベラル」の特徴は「社会的な投資」に重きを置くことである。「従来型リベラル」が、高齢者や障害者などの社会的な弱者への生活保障を重視するのに対し、「新しいリベラル」は「全ての世代」への「投資」を重視する。この「全ての世代」には、社会的弱者だけではなく、現役世代や学生・児童、さらにはこれから生まれてくる子供や孫も含まれる。そして「投資」とは、個人がより良い生活を送ることができるように支援するための施策を意味する。具体的には、学ぶ意欲のある人々への奨学金、出産・子育て世帯への支援、子供や孫世代への教育や生活の充実といった施策である。そしてそれらを実施する主体が行政である以上、反政府主義といった立場を採る必要がない。

 思うに「新しいリベラル」の考え方の基底には、人間は成長できるという考え方がある。「従来のリベラル」にとっては甘い考え方に見えるかもしれない。個人の成長よりも現に困っている人の救済を優先せよ、と考えるかもしれない。ただ、人々の生活の充実を望むなど、共有できる考え方も多いはずだ。本書は今年の参議院議員選挙前に出版されているが、今回の選挙結果を踏まえると、まさに「リベラル」を自任する人々にこそ、本書は手に取って読まれるべきではないか、そんなことを思った。